2017年5月に、開園100周年を迎える井の頭恩賜公園。吉祥寺の街とともに歩み、戦前からの長い歴史を通して愛されてきたこの公園を舞台に、画期的な映画が誕生した。
『PARKS パークス』が描くのは、公園の過去、現在、そして未来。50年前に作られたひとつの曲が引き金となり、1960年代の恋人たちの記憶が、2017年の吉祥寺に生きる若者たちの夢と冒険につながっていく。さまざまな人々が忘れがたい時間を共有し、やがて去っていく公園のような映画。かぎりなくオープンで自由で、祝祭の高揚感にあふれながら一抹の哀切な後味を残す、極上の青春音楽映画が完成した。企画を立てたのは、ファンに惜しまれながら2014年に閉館した吉祥寺の名物映画館「バウスシアター」のオーナー、本田拓夫。「映画館の終わりを映画の誕生のきっかけにできたら」という思いが、本作の制作を実現させた。
映画の冒頭、スクリーンを埋め尽くすのは満開の桜。春の風に吹かれながら自転車で公園をめぐる主人公の純は、吉祥寺でひとり暮らしをする大学生。10年前に子役としてCMで注目されたが、その後ブレイクするきっかけがなく、何をやっても中途半端。友人の理沙はモデル業やイラストで活躍しているのに……。そんな純のもとに突然、高校生のハルが現れる。ハルの父親の昔の恋人を探すうちに、ふたりは地元の青年トキオと知り合う。小説を書こうとしているハルと、スタジオで働いてミュージシャンを目指すトキオ。無限の可能性を前にしながらまだ何者にもなっていない3人の、それぞれの未来に向けての曲作りが始まる。自分はいったい何者なのか? 本当にやりたいことは何なのか? 誰もが一度は経験する青春の焦燥が、世代を超えて見るものの心を共振させる。
脚本・監督を手がけたのは、初の商業映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(11)で高い評価を受け、MVやCMでも瑞々しい感性を発揮している新世代の旗手、瀬田なつき。キャストにも最旬の俳優たちがそろった。主人公・純を演じるのは、『告白』(10)で脚光を浴び、TVドラマ「あまちゃん」(13)、『リトル・フォレスト』シリーズ(14・15)、『古都』(16)などの話題作に出演している実力派、橋本愛。高校生のハル役には、『俺物語!』(15)、TVドラマ「こえ恋」(16)「真田丸」で人気を集める期待の女優、永野芽郁。トキオ役には、『寄生獣』(14)、『バクマン』(15)など多くのヒット作品で活躍するほか、『嘘つきみーくん~』『5windows』(12)への出演で瀬田映画に欠かせない俳優となった染谷将太。このほか石橋静河、森岡龍、柾木玲弥、長尾寧音など注目の若手俳優に加え、吉祥寺在住のベテラン佐野史郎などが脇を固める。そして、60年代からのさまざまな活動で日本の音楽界を刺激し続けてきた麻田浩ほか、スカートの澤部渡、シャムキャッツ、高田漣などのミュージシャン、音楽関係者も多数出演して、映画という公園に華を添える。
『PARKS パークス』のもうひとつの柱は音楽。世界的に注目される音楽家トクマルシューゴが監修を担当し、瀬田監督と二人三脚で脚本段階から構想して練り上げていった。劇中歌の「PARK MUSIC」は、映画のなかでビートルズ来日以前の60年代風フォークから2017年のまったく新しいポップ・ソングへと、華麗に変貌を遂げる。このほか、吉祥寺ゆかりのアーティストから東京インディーズの人気バンドまで、20組以上の音楽家たちがトクマルシューゴからの依頼で楽曲を提供。ハイセンスなサウンドトラックに結実した。エンディングテーマは、バウスシアターでのセッションから誕生した相対性理論の「弁天様はスピリチュア」。やくしまるえつこのピュアな歌声がラストシーンの感動の余韻を彩る。